公務員から民間に転職すると年金はどうなる?退職手当の差も試算
この記事でわかること
- 2015年10月から公務員も厚生年金に加入しています。民間に転職しても加入期間は引き継がれ、転職だけで年金が減るわけではありません。
- 公務員独自の年金払い退職給付は転職で積立が止まりますが、1年以上の組合員期間があれば65歳から受け取れ、65歳までは利子も付きます。
- 退職手当は自己都合だと支給率が下がります。俸給月額35万円・勤続15年の試算では、自己都合で約363万円、定年・事務都合などの率なら約568万円です。
公務員から民間に転職すると、年金や退職手当はどうなるのでしょうか。キャリアの選択肢を考える30代・40代の公務員の方にとって、気になる点の一つです。結論からお伝えすると、公務員として働いた期間の年金がなくなることはなく、転職したことだけを理由に年金が減るわけではありません。差が出やすいのは、公務員独自の年金払い退職給付の積立期間、自己都合退職による退職手当の支給率、そして転職までに期間が空いたときの手続きの3点です。
本記事では、2026年10月時点の国家公務員共済組合連合会(KKR)、内閣人事局、日本年金機構、国税庁の資料をもとに、公務員から民間に転職したときの年金と退職手当の変化を、試算とあわせて解説します。
公務員から民間に転職すると年金はどうなるのか
KKRの資料によると、2015年(平成27年)10月1日から被用者年金制度が一元化され、それまでの共済年金は厚生年金に統一されました。公務員も会社員と同じ厚生年金に加入しており、民間に転職すると、転職先の厚生年金に加入する形になります。公務員として加入していた期間の記録は消えず、65歳から受け取る老齢厚生年金の計算に含まれます。
転職回数と年金の関係について、老齢厚生年金は加入していた期間と、その間の報酬をもとに計算されます。何回転職したか、どこで働いたかそのものが年金額を決めるわけではありません。転職後の給与が上がれば年金額が増える方向に、下がれば減る方向に働きます。
公務員から民間に転職するときに押さえておきたい用語は次のとおりです。
- 老齢厚生年金とは、厚生年金に加入していた人が原則65歳から受け取る、報酬に比例した年金のことです。
- 経過的職域加算額とは、2015年9月以前に公務員として加入していた期間がある人に、老齢厚生年金とあわせて支給される、旧共済年金の職域部分にあたる年金のことです。
- 年金払い退職給付とは、2015年10月以後の公務員の期間を対象に、報酬の1.5%(付与率)と利子を積み立てて年金にする、公務員独自の上乗せ年金のことです。
- 退職手当とは、公務員が退職するときに、俸給月額と勤続年数、退職理由に応じて支給される一時金のことです。
公務員から民間に転職したときの年金と退職手当の比較
公務員を続けた場合と転職した場合で変わるもの
| 項目 | 公務員を続けた場合 | 民間に転職した場合 |
|---|---|---|
| 老齢厚生年金 | 加入を続ける | 転職先で加入を続ける。公務員の期間も通算される |
| 経過的職域加算額 | 2015年9月以前の期間分を受け取る | 同じく受け取る(原則1年以上の組合員期間が必要) |
| 年金払い退職給付 | 積立が続く | 積立は退職時で止まる。それまでの分は65歳から受け取る |
| 退職手当 | 定年などで退職すると高い支給率 | 自己都合の支給率で計算される |
| 転職先の制度 | なし | 退職金や企業年金の有無は会社によって異なる |
※出典 KKR「知っておきたい厚生年金・退職等年金給付(令和7年版)」、内閣人事局。
公務員を続けた場合に受け取れる年金額の目安は、年収600万円の公務員の年金の試算で紹介しています。
年金払い退職給付は転職しても65歳から受け取れる
KKRの資料によると、年金払い退職給付の退職年金は、次の3つをすべて満たすと支給されます。
- 65歳に達していること
- 退職していること
- 1年以上引き続く組合員期間があること
民間に転職すると、それ以降の付与額の積立は止まります。ただし、それまでに積み立てた額には、受け取る条件を満たす前の月まで、基準利率による利子が複利で付く仕組みです。基準利率は2026年10月から0.82%です。なお、組合員期間が10年未満の場合、終身退職年金の計算のもとになる額は給付算定基礎額の4分の1となり、10年以上の場合の2分の1より少なくなります。
ご自身の積立額は、共済組合から届く給付算定基礎額残高通知書で確認できます。転職前に一度確認しておくと、65歳以降の見通しを立てやすくなります。年金払い退職給付の仕組みや受け取り方は、年金払い退職給付とは?公務員が個人年金保険を考える前に知ることでくわしく解説しています。
退職手当の試算 自己都合と定年・事務都合など
内閣人事局の国家公務員退職手当支給率早見表をもとに、退職手当の基本額を次の前提で試算しました。
- 国家公務員で、退職日の俸給月額など(基本給月額)は35万円
- 早見表の支給率(調整率83.7/100を含む)を使い、調整額は含めない
- 民間への転職は自己都合退職として計算する
| 勤続年数 | 自己都合の支給率 | 自己都合の退職手当 | 定年・事務都合などの支給率 | 定年・事務都合などの退職手当 |
|---|---|---|---|---|
| 10年 | 5.022 | 約176万円 | 8.37 | 約293万円 |
| 15年 | 10.3788 | 約363万円 | 16.216875 | 約568万円 |
| 20年 | 19.6695 | 約688万円 | 24.586875 | 約861万円 |
| 25年 | 28.0395 | 約981万円 | 33.27075 | 約1,165万円 |
※上記の前提に基づく当サイトの試算。支給率は内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」による。地方公務員の支給率は各自治体の条例で定められます。
同じ勤続年数でも、自己都合退職では支給率が低くなり、勤続15年の試算では約204万円の差があります。また、国家公務員退職手当法第6条の4によると、退職手当に加算される調整額は、勤続9年以下の自己都合退職者には支給されず、勤続10年以上24年以下の自己都合退職者は半額になります。国家公務員の退職理由別の平均支給額と、地方公務員との比較は、国家公務員と地方公務員の給与・退職手当の解説で紹介しています。
退職手当にかかる税金
国税庁によると、退職手当は退職所得として扱われ、勤続20年以下の場合は40万円に勤続年数を掛けた額(80万円に満たない場合は80万円)を退職所得控除として差し引けます。勤続15年なら控除額は600万円のため、試算の約363万円には所得税がかかりません。退職手当を受け取るときに退職所得の受給に関する申告書を提出すれば、原則として確定申告は不要です。
転職までに期間が空くときの手続き
日本年金機構によると、退職してから次の勤務先に入るまでに期間が空く場合は、その期間について国民年金第1号被保険者の手続きを行い、国民年金保険料を納める必要があります。届出の期限は退職日の翌日から14日以内です。手続きをせずに未納の期間ができると、将来の老齢基礎年金が少なくなる可能性があります。
また、国家公務員退職手当法には、勤続期間が12か月以上で退職し、退職手当の額が雇用保険の失業等給付に相当する額に満たない場合などに支給される、失業者の退職手当の仕組みがあります。次の勤務先が決まるまで期間が空く場合は、所属先の人事担当に確認しておきましょう。
注意すべきリスク
- 転職後の給与の変化。老齢厚生年金は報酬に比例するため、転職後に給与が下がった状態が続くと、公務員を続けた場合より年金額が少なくなる可能性があります。
- 転職先の退職金・企業年金。民間企業の退職金や企業年金は、制度の有無も含めて会社ごとに異なります。就業規則などで確認が必要です。
- 空白期間の未納。国民年金の手続きを忘れると、その期間が未納となり老齢基礎年金に影響します。
- 地方公務員の違い。地方公務員の退職手当は各自治体の条例で定められるため、試算と異なる場合があります。
よくある質問
Q1. 公務員から民間に転職すると年金は減りますか?
転職しただけで年金が減ることはありません。2015年10月から公務員も厚生年金に加入しており、民間に転職しても加入期間は通算されます。ただし、転職後の給与水準や、公務員独自の年金払い退職給付の積立期間によって、受け取る総額は変わります。
Q2. 公務員として働いた期間の年金はどうなりますか?
公務員の期間の記録は消えず、65歳から受け取る老齢厚生年金の計算に含まれます。2015年9月以前に公務員として加入していた期間がある場合は、経過的職域加算額もあわせて受け取れます。
Q3. 年金払い退職給付は転職したらもらえませんか?
1年以上引き続く組合員期間があれば、退職後、65歳から受け取れます。転職すると積立は止まりますが、それまでの積立額には65歳になるまで基準利率による利子が付きます。
Q4. 公務員を自己都合で辞めると退職手当はいくらですか?
俸給月額と勤続年数によって決まります。国家公務員の早見表による当サイトの試算では、俸給月額35万円の場合、自己都合で勤続15年なら約363万円、勤続20年なら約688万円です。地方公務員は各自治体の条例で定められます。
Q5. 転職までに期間が空く場合、年金の手続きは必要ですか?
必要です。日本年金機構によると、次の勤務先に入るまでの期間は国民年金第1号被保険者の手続きを行い、保険料を納めます。届出の期限は退職日の翌日から14日以内です。
まとめ 公務員から民間に転職する前に確認すること
公務員から民間に転職しても、それまでの年金の加入期間がなくなることはありません。一方で、年金払い退職給付の積立が止まることや、退職手当が自己都合の支給率になることは、転職前に数字で把握しておきたい点です。
- 給付算定基礎額残高通知書で、年金払い退職給付の積立額を確認する
- 勤続年数と俸給月額から、自己都合退職の場合の退職手当を見積もる
- 転職先の給与、退職金、企業年金の制度を確認し、転職までに間が空く場合は国民年金の手続きを準備する
公務員として積み上げてきた年金や退職手当の仕組みを理解しておけば、転職するかどうかを、感覚ではなく数字にもとづいて判断できます。
専門家と一緒に転職後のライフプランを見直してみませんか
公務員から民間に転職したときの年金や退職手当の影響は、勤続年数や転職先の給与、退職金制度によって答えが変わります。転職後の老後資金の見通しをご自身の状況に合わせて整理したい方は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも選択肢の一つです。
マネーパスポートの公式LINEでは、新しい記事などをお知らせしています。公式LINEを友だち追加する
監修 宮﨑 裕太(2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、一種証券外務員)
更新日 2026年10月9日
参考資料
- 国家公務員共済組合連合会「知っておきたい厚生年金・退職等年金給付(令和7年版)」
- 国家公務員共済組合連合会「令和8年10月からの退職等年金給付の基準利率・年金現価率について」
- 内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」
- 内閣人事局「給与・退職手当」
- 内閣人事局「失業者の退職手当の支給要件及び支給額算定基準」
- e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
- 日本年金機構「退職後の年金手続きガイド」
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
※本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の推奨や個別の税務・投資判断を行うものではありません。ご自身の年金額や退職手当の額は、所属する共済組合や人事担当、関係機関にご確認ください。