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育休取得の不安1位は「収入減少」|男性育休の理想と現実・夫婦間の評価ギャップを医療従事者向けに解説

「育休を取りたい気持ちはある。でも、収入が下がったら生活が不安で……」——医師・看護師・薬剤師・理学療法士など、医療従事者の皆さんの中にも、こうした葛藤を抱えている方は少なくないのではないでしょうか。

株式会社マイナビが2026年に実施した「育休取得と満足度に関する実態調査」によると、育休取得を躊躇する理由の第1位は「収入減少への不安」でした。さらに、男性が「理想とする育休取得日数」は現実の取得日数の2倍以上に及んでおり、育休に対する夫婦間の評価にも大きなギャップがあることが明らかになっています。

本記事では、この調査データを詳細に読み解きながら、年収500万円以上の医療従事者が育休取得の「収入不安」を具体的に解消し、理想に近い育休を実現するための金融・制度活用策を、ファイナンシャルプランナーの視点から徹底解説します。

育休取得の不安1位「収入減少」:調査データが示す医療従事者への深刻な影響

マイナビの調査(2026年)では、育休取得を検討している・検討したことがある男女に対して「育休取得に際して感じる不安」を複数回答で聞いたところ、以下の結果が得られています。

順位 不安の内容 回答割合(概算) 医療従事者への影響
1位 収入の減少 約57% 夜勤手当・当直手当・残業代が消失。月収が大幅に下がるケースが多い
2位 職場への迷惑・人手不足 約45% 医療現場は慢性的な人手不足。「抜けられない」プレッシャーが強い
3位 キャリアへの影響・評価低下 約38% 専門職資格の維持・昇進・専門外来担当への影響を懸念
4位 育休中・復帰後の業務不安 約29% 医療技術・薬事知識のブランク、最新ガイドライン更新への不安
5位 パートナーや家族との意識のズレ 約22% 不規則勤務の医療職同士や、収入格差のある医療職カップルに特有の課題

医療従事者が「収入減少」を特に深刻に感じる理由

一般的な会社員と異なり、医療従事者は基本給に加えて各種手当が収入の大きな割合を占めるという給与構造を持ちます。育休中はこれらの手当が全て停止するため、受け取る育児休業給付金(雇用保険から給付)との乖離が大きくなります。

職種 育休前の月収例 育休中の給付金(180日以内67%) 月収ダウン額の目安
看護師(夜勤あり・経験5年) 約40万円(手当含む) 約26万8,000円 ▲約13万円
薬剤師(調剤薬局・管理職) 約45万円 約30万2,000円 ▲約15万円
勤務医(研修医明け・当直あり) 約65万円(当直代含む) 約28万3,000円(上限あり) ▲約37万円
理学療法士(病院勤務) 約32万円 約21万4,000円 ▲約11万円

※育児休業給付金には上限(2026年現在:支給開始から180日以内は賃金日額の67%、上限月額約30万円程度)があるため、高収入の勤務医ほど「給付金の恩恵」が相対的に小さくなります。

つまり、収入が高い医療従事者ほど、育休中の「実質的な収入ダウン率」が大きくなるという逆説的な構造があります。これが「収入不安」が1位になる根本的な理由の一つです。

男性育休の「理想と現実」:取得日数が2倍超のギャップを生む3つの壁

マイナビ調査では、男性の育休取得について理想と現実の間に大きなギャップがあることも明らかになっています。

指標 データ 医療従事者への含意
理想の取得日数(男性) 平均138.6日(約4.6ヶ月) 子どもと充分な時間を過ごしたい意識は医療職男性も同様に高い
実際の取得日数(男性) 平均63.5日(約2.1ヶ月) 医療現場では「人手不足」「当直シフト問題」でさらに短くなる傾向
ギャップ 約2.18倍(75日分・約2.5ヶ月分) 医療職では職場環境・シフト制の制約が「理想」を「現実」に近づける最大の障壁

医療現場で育休の「理想と現実」がここまで乖離する3つの構造的壁

壁①「シフト制・当直制の呪縛」:病棟看護師・当直医・救急薬剤師など、シフト制で職場が成立している医療現場では、「一人が長期抜ける」ことが他のスタッフへの直接的な負担増につながります。「申し訳ない」という罪悪感が育休期間を自主的に短縮させる強力な心理的圧力として機能します。

壁②「代替人員確保の困難さ」:専門職資格が必要な医療職は、一般職のように「臨時職員」で即時代替することが難しい職種です。病院・薬局側も「育休代替の採用が間に合わない」という構造的問題を抱えており、個人の意思だけでは育休期間を延ばせないケースが多くあります。

壁③「収入減少とローン・教育費の二重圧力」:年収500万円以上の医療従事者は、収入水準に見合った住宅ローン・教育費・生活費の支出構造を持っていることが多く、「月収が10〜30万円以上下がる」状況は家計に直接的なダメージを与えます。これが育休期間を「収入面から」短縮させる現実的な圧力になっています。

夫婦間の「育休評価ギャップ」:医療職カップルが直面する特有の問題

調査では、育休中のパートナーの育児・家事参加に対する夫婦間の評価に大きな差があることも判明しています。

評価項目 男性(育休取得側)の自己評価 女性(パートナー)の評価 ギャップの程度
育児への関与度 「十分にできている」73% 「十分だと思う」41% ▲32ポイント差
家事の分担 「平等に分担している」65% 「平等だと思う」33% ▲32ポイント差
精神的サポート 「できている」68% 「できていると思う」47% ▲21ポイント差

医療職カップルにおける「評価ギャップ」が拡大しやすい背景

このギャップは、医療職のカップル・共働き家庭では特に深刻になる傾向があります。その背景として以下が挙げられます。

①「職場のヒーロー」から「家庭の新人」へのギャップ:医師・看護師・薬剤師は、職場では専門家として高い評価と権限を持ちます。しかし育児・家事は「未経験の新人」としてゼロからスタートします。この落差が「できていると思い込む」という認知バイアスを生みやすくします。

②「見えない負担」の理解不足:医療職は患者のニーズを的確に察知するプロフェッショナルですが、それを家庭に転用できないケースが多く見られます。育児中の女性が担う「精神的負荷の管理(メンタルロード)」——次の検診日の把握、保育園の申請スケジュール、夜泣きのパターン把握など——は、可視化されにくい「第2の仕事」です。

③評価のズレが夫婦関係のストレスを生む:このギャップが積み重なると、産後うつリスク・夫婦間の信頼関係の悪化・復職後のキャリア格差の拡大といった問題に発展します。「育休を取れば解決」ではなく、「育休中の関与の質」こそが夫婦の信頼と子どもの発達に影響することを、データは示しています。

【FP解説】医療従事者が「収入不安なく育休を取る」ための具体的な5つの対策

育休中の「収入減少」という最大の不安を、FPの視点から解消するための具体的な方法を解説します。

対策①:育児休業給付金の正確な受給額を「今すぐ」試算する

育休中の収入不安の多くは、実際の受給額を正確に把握していないことから生まれます。雇用保険の育児休業給付金は、育休開始から180日以内は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」、181日以降は50%が支給されます(2026年現在)。

医療従事者の場合、夜勤手当・当直代・残業代が「賃金日額」の計算に含まれる場合と含まれない場合があるため、勤務先の人事・総務部門に確認することが重要です。育休前の6ヶ月の賃金をもとに計算されるため、育休取得前の半年間に夜勤・当直を多く入れることで給付金の基準額を最大化できるという戦略も有効です。

対策②:育休中の「社会保険料免除」を正しく活用する

育休中は健康保険・厚生年金の保険料が本人・事業主ともに全額免除になります(雇用保険料は免除なし)。この免除額は医療従事者にとって無視できない金額です。

年収(育休前) 月額社会保険料(本人負担分) 1年間の免除額(目安)
年収500万円(月収約42万円) 約6万3,000円 約75万円
年収600万円(月収約50万円) 約7万5,000円 約90万円
年収700万円(月収約58万円) 約8万7,000円 約104万円

社会保険料が免除される期間は、将来の厚生年金受給額には影響しない(免除期間も保険料を納めたものとして計算される)ため、老後の年金が減るという心配も不要です。この制度を正確に理解することで、「育休中の実質的な手取りダウン」は想定より小さくなります。

対策③:育休前に「生活防衛資金」を計画的に積み立てる

収入不安を根本的に解消する最も確実な方法は、育休取得前に「育休資金」として生活費の3〜6ヶ月分を別口座で積み立てておくことです。

年収500万円・月収42万円の医療従事者が1年間の育休を取る場合、月収ダウン額を月13〜15万円と仮定すると、1年間の不足額は約156〜180万円になります。これを育休取得の1〜2年前から月6〜10万円ずつ積み立てておけば、収入ダウンの不安を大幅に軽減できます。積み立て先は、新NISAのつみたて投資枠(育休まで2年以上ある場合)や高利率の普通預金・定期預金が適しています。

対策④:「育休シフト設計」を職場と事前に交渉する

医療職において育休取得の最大の壁は「職場の人手不足・シフト問題」です。これを解消するためには、育休取得の少なくとも3〜6ヶ月前から職場の上長・師長・科長との丁寧な事前交渉を始めることが不可欠です。

具体的には以下の点を明確にして交渉することが有効です。「育休開始日と終了予定日の明確化」「復帰後のシフト条件(夜勤免除期間など)の事前確認」「育休中の緊急連絡の範囲の合意」「後任・代替体制の構築への積極的協力」。育休取得は法的権利ですが、医療現場においては「権利の主張」より「現場との協働」が円滑な育休実現への近道です。

対策⑤:育休後の「キャリア復帰計画」を育休前から設計する

育休中のキャリア不安を軽減するためには、復帰後の具体的なビジョンを育休取得前から明確にしておくことが重要です。例えば、「育休中に専門資格の更新・新規取得に向けたオンライン学習を行う」「復帰後は当面は日勤のみで徐々に夜勤に戻す」「復帰後1年以内に特定の診療科・業務に再チャレンジする」など、具体的な目標を持つことで、育休が「キャリアの空白期間」ではなく「充電期間」になります。

夫婦の「育休評価ギャップ」を縮める:医療職カップルが実践すべき3つのアプローチ

調査が示す「夫婦間の評価ギャップ」を縮めるための具体的な方法を提案します。

アプローチ①:育休前に「家事・育児の見える化」を共同作業で行う

育休開始前に夫婦で「育児・家事の全タスクリスト」を作成することをお勧めします。おむつ替え・授乳・沐浴・検診予約・寝かしつけ・夜泣き対応・離乳食準備など、全ての作業を書き出し、それぞれの担当・頻度・所要時間を明確にします。これにより、「やっているつもり」と「実際の貢献量」のズレが客観的に確認できます。医療従事者はデータ・数値による評価に慣れているため、この「タスクの定量化」アプローチは特に有効です。

アプローチ②:「メンタルロード(精神的負荷)」の存在を認識し分担する

育児で見落とされがちな「メンタルロード」——次回の予防接種の日程管理、保育園入園申請のスケジュール把握、子どもの体調変化のモニタリングなど——を、育休中の男性が積極的に担う意識を持つことが重要です。これを意識的に担当するだけで、パートナーの「見てもらえていない」という不満が大幅に解消されます。

アプローチ③:「育休の目標」をカップルで事前に共有・合意する

育休中に「何を達成したいか」を夫婦で事前に話し合い、共通の目標を設定することで、育休後の評価のズレが防ぎやすくなります。「パートナーの睡眠時間を確保する」「子どもとの関わりの時間を週○時間確保する」「家事の特定カテゴリを完全担当する」など、具体的・測定可能な目標の設定が有効です。

医療従事者が育休を活かした「資産形成」も同時に実現する方法

育休は収入が下がる期間ですが、実は資産形成にとって重要な「仕組み構築の好機」でもあります。多忙な医療現場を一時的に離れる育休中に、以下の金融的な整理・設定を行うことで、復職後の資産形成が加速します。

育休中にやること 具体的な内容 期待される効果
保険の見直し 子どもが生まれたことで必要保障額が変わる。生命保険・医療保険・学資保険の必要性を再検討 不要な保険を解約し年間10〜30万円の保険料を削減できるケースも
新NISAの設定・最適化 育休中でも新NISAの積立は継続可能(給付金から積立)。自動積立の設定・見直し 复職後の積立増額に向けた基盤構築
iDeCoの継続・再設定 育休中もiDeCoは原則継続(掛金拠出は任意で停止可能)。復職後の拠出額を増額する計画を立てる 老後資金形成の維持・加速
家計の固定費棚卸し サブスク・通信費・駐車場費などを見直す時間を確保 年間10〜30万円の固定費削減が現実的に実現可能
児童手当・子育て給付の把握 児童手当・各自治体の育児支援給付・高校無償化・保育料補助制度の確認 受け取れる給付を漏れなく活用することで家計を補強

育休は「収入が下がる不安な時期」として捉えるのではなく、「家計と資産形成を根本的に見直す、人生最大のリセット機会」として活用することが、長期的な家計強化につながります。

まとめ:「収入不安」を理由に育休を短縮しない——医療従事者への提言

本記事で確認してきた通り、育休取得の不安1位「収入減少」は、正しい知識と事前準備によって大幅に軽減できます。育児休業給付金の正確な試算、社会保険料免除の活用、育休資金の事前積立、職場との事前交渉——これらを組み合わせることで、年収500万円以上の医療従事者であっても、経済的な不安を抱えずに理想に近い育休を実現できる可能性は十分にあります。

また、男性育休の「理想と現実のギャップ」は、収入不安と職場環境という2つの壁によって生まれています。この壁を乗り越えるためには、金融的な備えと職場との建設的な対話の両方が必要です。

夫婦の「育休評価ギャップ」については、事前の家事・育児タスクの見える化とメンタルロードの意識的な分担によって、育休の「質」を高めることができます。育休の長さだけでなく、育休中の「関与の密度」がパートナーとの信頼関係と子どもの発達に最も大きな影響を与えます。

育休取得に関する「お金の不安」を具体的に解消したい方、医療従事者の家計・資産形成についてご相談したい方は、ぜひ専門のファイナンシャルプランナーへの無料相談をご活用ください。

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