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医療従事者向け|持ち家vs賃貸30年1500万円差を年金別に解説

「日勤・夜勤・当直をこなしながら、年収500万円を超える収入を得ている」という医療従事者の方でも、老後の住まいについて本気で考える時間を確保できている人はほとんどいません。実はこの「忙しさゆえの先送り」が、退職後の暮らしに大きな影響を及ぼします。

本記事では、40代・50代の貯蓄「中央値」の実態、持ち家と賃貸で老後30年間に生じる費用の違い、そして厚生年金・国民年金それぞれの年金タイプ別に試算した住居費のカバー率を、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点から解説します。結論を先取りすると、持ち家と賃貸では老後30年間で約1,500万円の差が生じ、年金だけでこの差を埋めることは容易ではありません。

本記事で紹介するデータは、金融経済教育推進機構の資産形成に関する調査、国土交通省の高齢者向け住宅市場の調査、厚生労働省が公表する年金の平均受給額などの公的データを根拠としています。

この記事のポイント

  • 40代の貯蓄中央値は100万円、50代は120万円。平均値との差が大きく、「高収入=安泰」とは限らない
  • 老後30年間の住居費は、持ち家が約900万〜1,200万円、賃貸が約2,655万円。差額は約1,500万円
  • 厚生年金でも住居費だけで年金総額の約5割を占め、国民年金のみの場合は年金総額を住居費が上回る可能性がある

1. 医療従事者こそ見落としがちな「高収入なのに貯蓄が少ない」現実 ― 40代・50代の貯蓄中央値

看護師・臨床検査技師・薬剤師・理学療法士など、夜勤手当や当直代を含めて年収500万円以上を得ている医療従事者は少なくありません。しかし、金融経済教育推進機構の調査データを見ると、40代・50代の貯蓄実態は決して安泰とは言えません。

年代(単身世帯)平均値中央値(現実の数字)金融資産なしの割合
40代859万円100万円32.1%
50代999万円120万円35.2%

一部の資産形成に成功している層が「平均値」を引き上げているだけで、実態を映す「中央値」はわずか100万円台にとどまります。夜勤・当直による変動収入が多く忙しい医療従事者ほど、収入の割に資産管理へ時間を割けず、気づかないうちに貯蓄が伸びていないケースが少なくありません。

大切なのは、目先の便利さや消費のための支出ではなく、資格維持やスキルアップ、そして老後の住まいや年金といった「本質的な価値」に資金を向ける視点を持つことです。

2. 徹底比較:持ち家vs賃貸。30年間で生じる「1500万円」の経済的格差

老後の家計において最大の「出血点」となるのが住居費です。ローン完済後の「持ち家」と「賃貸」で、老後30年間に発生するキャッシュフローを比較します。

支出項目(老後30年間)持ち家(ローン完済済)賃貸(家賃月7万円想定)
固定費用固定資産税:300万円家賃:2,520万円
維持・更新費大規模修繕等:500万〜800万円更新料:約105万円
保険料火災・地震保険:90万円火災保険:30万円
【合計】約900万〜1,200万円約2,655万円

この「約1500万円の格差」は極めてリアルな数字です。ライフステージの変化に応じて住み替えができる自由さは賃貸の利点ですが、「一生賃貸」を選ぶのであれば、持ち家派よりも1500万円以上多く、老後に使える即金性の高い資産を現役時代に構築しておくことが前提条件になります。

3. 【年金別シミュレーション】厚生年金と国民年金、老後の住居費カバー率を試算

医療従事者の働き方は大きく分けて「病院・クリニックに勤務する会社員・公務員」と「開業医など自営業」の2パターンがあり、加入する年金制度が異なります。勤務医療従事者は厚生年金(基礎年金を含む)、自営の医療従事者は国民年金のみが基本となり、老後に受け取れる年金額には大きな差が生じます。

厚生労働省が公表する平均年金月額を目安に、老後30年間の年金総受給額と、先述の住居費が年金のうちどの程度を占めるかを試算しました。

年金タイプ月額目安30年間の受給総額目安持ち家30年費用の占める割合賃貸30年費用の占める割合
厚生年金
(勤務医療従事者等)
約14.5万円約5,220万円約20%約51%
国民年金のみ
(開業・自営の医療従事者等)
約5.6万円約2,016万円約52%約132%(年金総額を上回る)

※月額はいずれも厚生労働省が公表する平均受給額を基にした目安であり、加入期間や収入により個人差があります。正確な見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で必ずご確認ください。

厚生年金に加入する勤務医療従事者であっても、賃貸を選んだ場合は住居費だけで年金総額の約半分が消える計算です。食費や医療費など他の生活費まで考慮すると、年金だけに依存した老後は現実的ではありません。開業医など国民年金のみの医療従事者の場合はさらに深刻で、賃貸の住居費が年金総額を上回る可能性があり、現役時代からの資産形成がより一層重要になります。

4. 高収入・高い社会的信用があっても「借りられない」?高齢者賃貸市場の厳しい現実

現役時代に高い収入と社会的信用を得て、賃貸物件の審査を難なくパスしてきた方であっても、高齢期の賃貸市場では「社会的信用の変容」という現実に直面します。

国土交通省の調査では、大家の約7割が高齢者の入居に「拒否感」を示しているとされています。現役時代にどれだけ収入があったとしても、退職後は市場から「身元保証にリスクがある単身高齢者」と見なされやすくなります。「お金さえ払えばどこでも住める」という前提は、老後には成立しにくいことを知っておく必要があります。

5. 医療従事者が今すぐ実践すべき3つのアクション

日々のシフト勤務や当直に追われる医療従事者に、細かな家計簿は必要ありません。FPとして、確実に実行できる「仅組み化」の処方箋を提示します。

  1. キャッシュフローの「一度切り」可視化: まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で将来の受給額を確認し、現在の資産の棚卸しを行ってください。現状の数値を把握しないままの資産形成は不可能です。
  2. 住まい方針の「仢決め」という戦略的決断: 「一生賃貸」なら差額の1500万円を投資で埋める。「持ち家」なら修繕費をプールする。この仢決めが、月々の積立目標額を論理的に決定します。
  3. 資産形成の「自動化・放置運用」の徹底: 夜勤や当直でまとまった時間を取りづらい医療従事者にとって、感情を排除した「自動化」は最強の武器です。新NISAやiDeCoで自動積立の設定を行い、多忙を逆手に取った放置運用を徹底してください。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. 年金だけで老後の住居費はまかなえますか?
厚生年金に加入する勤務医療従事者でも、賃貸の場合は住居費だけで年金総額の約5割を占める計算です。食費や医療費などを含めると、年金だけに依存した老後資金計画は厳しいのが実情です。

Q2. 持ち家と賃貸、老後はどちらが安心ですか?
一概には言えませんが、老後30年間の総コストを比較すると持ち家が賃貸より約1,500万円安く済む試算です。ただし持ち家には修繕費や資産の組み換えづらさ、賃貸には高齢期に借りにくくなるリスクがあり、それぞれの特性を踏まえた判断が必要です。

Q3. 医療従事者が老後資金を準備する際のポイントは?
夜勤手当や当直代など変動収入が多い医療従事者は、まず「ねんきん定期便」で将来の年金額を確認し、新NISAやiDeCoを使った自動積立で資産形成を「仅組み化」することが有効です。

まとめ:医療従事者が手にする、自由な「老後の住まいの選択肢」

適切な住まい戦略と、仅組み化された資産形成。これらは、老後において「生活のために働き続けなければならない」という制約から医療従事者であるあなたを解放し、「働き方を選び続けるか、穏やかな余生を送るか」を自ら選ぶための自由を支えます。

日々の診療や看護と同じように、ご自身のライフプランという「現場」も数字に基づいて的確に管理し、提もるがない老後の土台を築き上げてください。

この記事を書いた人

マネーパスポート運営部

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